ysaz (ImanazaS) blog

最近はデータ分析や機械学習が中心。たまに音楽や書評。

プログラミング教育ブームについて感じること

プログラミング教育ブームの到来

2020年度から小学校でのプログラミング教育が必修化されるといいます。

プログラミング教育:文部科学省

デパート等のおもちゃ売り場へ行けば、論理的思考力を鍛える多種多様な知育玩具が並んでおり、インターネット上では、関連ニュースや記事を見かけることが多くなりました。

「プログラミングは現代のそろばん」と銘打った寺子屋というか学習塾も非常に人気を博しているそうで、この流れに乗り遅れないようにと、熱の入った親御さんが多いことに感心しています。

また、史上最年少で将棋のプロ入りを果たした藤井聡太さんや、囲碁の世界では史上最年少の10才でプロ棋士と仲邑菫さん等、天才少年少女の登場も、論理的思考力を育むことへ人々が関心を寄せるきっかけをつくっているようにも感じます。

かくいう私はというと、ITリテラシー現代社会を生き抜く上での必須スキルだと思っているし、子供の頃からどっぷりプログラミングに触れておけばよかったと後悔したりもするので、自分の子には幼いうちから各種デジタル技術に慣れ親しんで欲しいと思っています。

そうした意味では、早期から義務教育にプログラミングを取り入れるという文科省の方針は私の考えに沿っており、私の場合は4歳の長男には使わなくなったノートPCにEdubuntuをインストールしたものを与えることから始めていたりします。

Edubuntuについては以下の記事を参照。今後このブログでもまとめてみるかもしれません。)

mogi2fruits.net

プログラミング教育に対する(ありがちな?)勘違い

因みに私も、つい最近まで勘違いしていたのですが、何も小学生がパソコンやタブレットに向かって特定のプログラミング言語の文法を学んだり、出されたお題に対してコーディングしていく訳ではないらしいです。

確かに、国語、算数から英語、音楽、体育まで、ただでさえいろんな科目を一人で子どもたちに教えなければならない小学校の先生にプログラミング言語まで指導させるのは荷が重い話です。

学校でのIT環境を整えることもさることながら、教える側にとっての負担の大きさについても十分議論されるべきと思います。

では子どもたちは、一体何を教わるのでしょうか。

それは「プログラミング的思考」というもので、物事は手順を踏んで進めることでうまく解決できる、というふうに、筋道を立てて論理的に考えていく力のことを指します。

物事をうまく解決するために、ときには繰り返しや条件分岐といった方法を使いながら、最適な手順を探ります。

ビジネスの世界でも、「仮設構築」とか「ロジカルシンキング」とかいう言葉が持て囃されますが、聞き手を説得させる上で、理路整然とした論理展開を行うことは非常に重要なので、こうした能力の土台作りが初等教育から開始されるというのは、好ましいことだと思います。

プログラミング教育に対する批判や課題

最近目にした記事で興味深かったのが以下の記事で、「実用偏重教育に潜む大きな危険性」について触れられています。

www.mag2.com

“How to use”、つまりスマホといったツールをいかにうまく使うか、というスキルではなく、“How to see”の能力を備えた人材を育てるべきだ、とあります。

現代教育は「実用」に重きを置きすぎていて、いろんな事柄を見極めたり追求したりする力を養う機会が減っている、というのが筆者の主張です。

※ただしこの記事のタイトルはややミスリードを招くように感じます。 筆者は、子どもたちが本を読む機会が減っており、プログラミング教育という科目が増えることで人文科学への比重がさらに軽減されることに異を唱えていますが、おそらくプログラミング教育が「パソコンを使わせるようにするための教育」と勘違いされているのでは、推察します。

この記事の中で強調されている"How to see"は次のように定義されています。

例えばスマホ社会や今後のネット社会、さらにはAI等の進化をどのように捉えて、それが人々の生活やものの考え方にいかなる影響を与えてゆくかというテーマをじっくりと見つめること

確かに、日本の教育課程では、「ルールやパターンに沿って問題を解き、一義的な答えを得る」、という場面に出くわすことが多く、"How to use"のアプローチに順応しがちということも頷けます。

また、ベストセラーとなっている「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」でも子どもの読解力低下が指摘されており、表面的なスキルだけ身につけても意味はなく、課題設定や定義付けをする能力があってこそだと論じられているようです。

※私は書店で眺め読みした程度で、まだ精読はできていません

先述したプログラミング教育も、単にツールを使いこなすだけのカリキュラムに成り下がることなく、物事を抽象化して本質を見抜く論理的思考回路を子どもたちに身につけさせる良いきっかけとなればいいなと期待しています。